フランスワインのラベルの読み方

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ワインの法律(原産地呼称統制法)

ECでは、EC域内で生産されるワインについて大きく2つに分類しています。一つが地域指定優良ワイン(VQPRD)という上級のワインでその下に位置するものがテーブルワイン(Vin de Table)です。フランスでは更にそれぞれを2つに分類し全部で4つのランクに分けています。

フランスのワイン分類



AOC(Appellation d'Origine Controlee:アパラシオン・ドリジーヌ・コントローレ)


原産地呼称統制法に基づく上質ワインです。ここでは法律そのものについては詳しくは触れませんが、ワインの歴史でもお話したようにワインの品質を保証するために1935年に制定された法律です。AOCに指定されるワインはフランスで生産されるワインの約30%を占め、日本で飲まれているフランスワインの多くはこのクラスに属します。この呼称を得るためには、全国原産地名称協会(INAO)が決めフランスの農務省が承認した生産条件を満たさなければなりません。この基準は大変厳しく、生産区域、ぶどう品種、最低アルコール度、最大収穫量、栽培方法、剪定方法、醸造方法に加え分析検査と、最終的に人間(専門の試験官)の試飲による官能検査に合格しなければなりません。(注.熟成条件が基準に加わることもあります)。このような厳しい検査に合格したワインだけがAOCを名乗ることができ、私達は安心して飲むことが出来ます。AOCワインのラベルの例を下に付けましたので、ワインを買うときの参考にしてください。

france label

一番重要なのは、原産地統制名称です。これは例で言うと黒枠で囲んだ PAULLIAC という記述です。これがAOCで定められた指定栽培地の名前です。もう一つの黒枠で囲んだ赤い字のアパラシオン表示ではこの指定栽培地が Appellation という単語と Controleeという単語の間に記述されます。例では Appellation Paulliac Controleeとなっており、これはポイヤック(村)という指定栽培地で造られたワインであることが分かります。

黄色の枠で囲んだのは収穫年です。ワインは農作物である葡萄から造りますから、天候に恵まれた良い年に良いワインができます。ですからこの表示も重要なのですが、どの年にどこの産地の天候が良かったかなんていう事は、普通の人は覚えていませんから、例えばヴィンテージ・チャートという産地別にワインの善し悪し(=天候の善し悪し)を点数で表した表などがお店によっては貼ってありますので参考にするといいでしょう。このHomePageでは、各産地別のページで紹介する予定です。

赤い枠で囲んだ部分はシャトーの名前です。法律では規定されていませんが生産者が誇るブランド名でもありますから大きく目立つように書いてあります。その上の絵はシャトーの絵です。またシャトーの格付けを示す表示も有りますが、これらは任意で記載してもよい項目ですので全部のワインに有るわけではありません。ブルゴーニュはシャトーというものがありませんから、AOC名が大きく書かれていることが多いようです。

ピンクの枠で囲んだ部分にはフランス産であることが記載されています。緑の枠の部分は生産者元詰めの表示です。紫で囲んだ記述は内容量とアルコール度数です。

これでAOCワインのラベルの読み方が分かると思いますが、やっぱり問題はアパラシオンの産地表示の数です。フランスのこのAOCだけで400以上あってしかも毎年少しづつ増えたりしていますので、とても覚えきれるものではありません。分からなくなったらやっぱり頼りになるのはワインアドバイザーやソムリエですね。自分の好みや予算を伝えればきっと良いワインを紹介してくれると思います。
でも好みというのは飲んでみない事には分からないという事もありますので、本当は幾つか飲み比べて自分の好みを見つけ出すことも大切だと思います。このHomePageでは先ずフランスのAOCワインについてテイスティングレポートで各産地毎の特徴などを順次レポートしていく予定ですので(1996年始めからの予定)、参考にしてください。



AO VDQS(Vin Delimite de Qualite Superieure)


ヴァン・デリミテ・ド・カリテ・シュペリュールという舌を噛みそうな名前ですが、日本語では原産地名称-上質指定ワインと言います。AOCの下にランクされる優良なワインですが、フランスの全生産量の僅か1%に過ぎませんので、ワイン売場で見かけることはほとんどないと考えてよいと思います。Appellation d'Origine Vin Delimite de Qualite Superieureの記述とVDQSマークがラベルに記載されていますので分かりやすいかと思います。



Vin de Pays(ヴァン・ド・ペイ)


日本語で地酒に相当します。Vin de Paysという記載があるのでこれを目安にしてください。フランス全生産量の14%に相当します。このクラスのワインはここ数年の激安ワインブームの影響で日本にも大量に輸入されるようになりました。日本の地酒と同様、中には品質のよいワインも存在しますので好みの味が見つかればお買い得ワインに該当するかと思います。ランクとしてはVDQSの下に位置しECの分類では2段階の下の分類に属します。



Vin de Table(ヴァン・ド・ターブル)


これはテーブルワインと訳しますが、ほとんど日常的に飲む極めてカジュアルなワインという位置づけです。全体の40%を占める量的には最も大きいクラスのワインです。フランス産のみの葡萄で作られた場合はフランス産の表示もありますが、イタリアからの輸入バルクワインとのブレンドも多く、この場合はフランス産の記載は付けられません。Vin de Paysと同様、ここ数年で日本にも大量に輸入され激安ワインの一角を占めるようになりました。Vin de Tableという表示が目印です。


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