スパークリング・ワイン

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スパークリング・ワイン

スパークリング・ワインは簡単に言うと発泡する(泡立つ)ワインです。良く知られているものとしてはシャンパーニュがあります。でも、シャンパーニュという名前はフランスのシャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインにしか使ってはいけません。フランスの場合は一般にはヴァン・ムスーという呼び方をします。ドイツではシャウムヴァイン、イタリアではスプマンテ、スペインはエスプモーソなどと呼びます。簡単な表にしてみましたのでご覧ください。



いろんな種類がありますね。フランスのクレマンというのは最近よく見かけるようになりました。クレマン・ド・ブルゴーニュとかクレマン・ダルザスとか見たことがある人も多いと思います。語源は泡がクリーム状になることからクレマンとなったそうですが、シャンパーニュという言葉が他の地方で使えなくなった事もありシャンパーニュ地方以外での上質の発泡酒に使われています。

ドイツの高級発泡酒はゼクト、これも見たことがある人が多いと思います。イタリアのスプマンテ、マスカット風味のアスティ・スプマンテがありますね。スペインはカヴァがあまりにも有名です。

さて造り方です。発泡酒の造り方は大きく分けて4つくらいあるのですが、ここでは最も高級なスパークリングワインを生み出すシャンパーニュ方式について説明します。下に簡単な図を書いてみました。



赤ワインや白ワインの造り方に比べて工程がたくさんあって難しそうですね。

シャンパンの造り方は別名「瓶内二次発酵方式」と言います。収穫した葡萄を選んで潰しプレスします。シャンパンは見た感じが透明ですから白ワインの仲間だと直ぐ分かりますが、実はピノ・ノワール、ピノ・ムニエという黒葡萄とシャルドネという白葡萄から造られています。でも赤い色が付かないのはここで直ぐにプレスしてしまうからです。ロゼシャンパーニュという薄い色の付いたシャンパーニュを見たことのある人もいるかと思いますが、このプレスを少し遅くして黒葡萄の色が少し付くようにするとロゼシャンパーニュになります。でも普通に造った白いものに後で赤ワインを混ぜてロゼシャンパーニュとすることも認められていて実際に造られています。

プレスした果汁は一次発酵に入り清澄されたあと、翌年アッサンブラージュと呼ばれるブレンドの作業に入ります。この作業は収穫年や採れた場所の違う原酒を巧みに調合し調和のとれた製品に仕上げる作業です。そしてブレンドされた原酒はここで瓶詰めされます。

ここで発泡酒を造る上で重要なリキュール・ド・ティラージュと呼ばれるものを添加します。これは糖と酵母を混ぜたものなのですが、ここで加えられた糖分をその酵母がアルコールと炭酸ガスに分解して、その炭酸ガスがワインの中に溶け込むことによって発泡性となるわけです。ガスの圧力は最終的には5気圧以上になり、また経済的な理由によってこの段階では瓶の栓として王冠が使われています。

そして熟成。出荷の数カ月前から瓶を少しづつ傾けて最後に逆さにする作業が行われます。これを動瓶(ルミアージュ)と呼んでいます。二次発酵の結果生じたオリを口元に集める作業です。

そしてデゴルジュマン(オリ抜き)の作業です。危険を伴う作業ですが、1本1本やらなければなりません。まず口元に集められた澱を凍らせてしまいます。塩化カリウムの水溶液を冷やして-10°Cの溶液にします。これに澱を口元に集めたワインの瓶をつけて澱を凍らせます。そして王冠を抜くと凍った澱が中の炭酸の圧力で外に飛び出します。こうして澱を取り除いたあと減ってしまったワインの代わりにリキュール・デクスペディションと呼ばれる甘いリキュール液を添加します。この時の添加量によってシャンパンの甘味が決まります。表にしましたので買うときの参考にしてください。



デゴルジュマンを上手にやるとこぼれるワインの量が減りますので、リキュールも少しですみます。でも全体のワインの量はまちまちになりますので、他のワインと違って一本一本量が違うことになります。これを隠す意味もあってシャンパーニュなどは瓶の肩の部分がフォイルなどで覆われています。

最後にコルクを打ちます。シャンパーニュの場合、他のワインと違ってきのこ型のコルクがしてありますね。これは中の炭酸の圧力に耐えられるようにするという目的もあります。普通のコルクは気泡が多すぎるので、圧縮コルクを使いワインに触れる部分に普通のコルクを使います。シャンパンのコルクを良く見ると3層構造になっているのが分かると思います。そして、圧縮コルクと言えど時間がたつと変形して中の圧力に耐えられなくなりますので、コルクを打ったシャンパーニュは早めに開栓したほうが良いと言えます。古くなったコルクはきのこ型の根元の部分がしぼんでいますので、ここがしぼんでいないコルクのシャンパーニュは出荷されてから時間が経っていないものと考えて良いでしょう。


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