99年のヌーボ

特別編として1999年のヌーボを紹介します
 
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待ちに待ったボージョレ・ヌーボの解禁がありましたね。今年もボージョレ・ヌーボは出来が良いようです。
また今年はイタリアを中心にご紹介していますのでイタリアのヌーボ(ヴィーノ・ノヴェッロ)も併せて紹介します

さてここでヌーボの基本的な作り方についてお話しましょう。
下で紹介しているボージョレ・ヌーボとヴィーノ・ノヴェッロはどちらも赤ワインです。赤ワインの作り方はこちらで説明していますが、黒葡萄を皮ごと発酵させて皮から赤い色の成分抽出します。

この赤い色の成分の多くはタンニンという物質で赤い色が濃いほどタンニンの含有量が多く長命でボディの豊かなワインであると言われます。タンニンは日本の緑茶にも含まれている渋みの成分です。ですから「赤い色が濃い」=「タンニンが多い」=「渋みが多い」という図式が成り立ちます。タンニンの多い高級赤ワインが長い熟成の年月が必要な理由はこのタンニンの渋みをまろやかにする為に年月がかかるためなのです。

さてボージョレ・ヌーボはどうでしょうか?
赤い色は高級ワインに負けず劣らず濃いと思いませんか?確かに濃い美しいルビー色をしています。
ではタンニンが多くて渋いのでしょうか?いえ、渋みはあまり感じずフルーティでとても飲みやすいワインです。ではどうして色が濃いのに渋くないのでしょう?

この秘密はヌーボーの醸造方法にあります。
ヌーボーは「マセラシオン・カルボニック」という独特の方法で作られます。マセラシオン・カルボニックとは大きな醸造用のタンクに原料の葡萄を上からどんどん投入してそのまま醸造する方法です。普通は葡萄を破砕してジュースと皮にしたものをタンクに入れますがヌーボーの場合は始めから葡萄を投入してしまいます。この方法ですとタンクの底の葡萄は上の葡萄の重みで自然とつぶされジュースとなって行きます。そして葡萄の皮についている自然の酵母菌の働きにより自然に発酵が始まります。

アルコール発酵は葡萄の糖分がアルコールと二酸化炭素に分解される化学反応です。ですからマセラシオン・カルボニックのタンクの底の方では二酸化炭素が充満した状態になっているはずです。このような二酸化炭素が充満した状態のもとでは葡萄の内部の酵素の働きにより潰れていない葡萄の細胞内部でもリンゴ酸が分解されアルコール、アミノ酸、コハク酸などが生成されていきます。更に葡萄の皮からも成分が浸出します。

この様にマセラシオン・カルボニック法で造ったワインはタンニンが少ない割りには色が濃く、渋みや苦みが少ないワインとなります。さわやかな酸味のリンゴ酸が分解されるので味わいもまろやかになります。更に二酸化炭素により酸化が防止されるためワインがフレッシュに仕上がります。これがヌーボの秘密です。ボージョレ・ヌーボは「ガメイ」という黒葡萄からマセラシオン・カルボニック法で造られています。

 

ボージョレ・ヌーボ 1999

今年も11月の第3木曜日がやってきました。
かつては世界で一番ボージョレ・ヌーボを飲めるといって先を争って
飲んだこともありましたが、そんな競争はさておき今年も美味しい
ヌーボを楽しみましょう。

もうスーパやデパートのワイン売り場では空輸のヌーボが並んでいて
試飲もできるところが多いようです。
私も幾つか試飲して見ましたが同じヌーボーでも随分と味わいが違う事に
改めて驚かされました。皆さんもチャンスがあったら幾つか飲み比べて
みると良いでしょう。今回私が試飲したのはジョルジュ・デュブッフの
きれいな花のラベルのヌーボ2種。有名な三ツ星レストランの
タイユバンのラベルのヌーボ、そして写真のシャトー・ド・ピゼイの4種類です。
(紀ノ国屋さんご協力ありがとうございました)

今年は天候にも恵まれどのヌーボもとても美味しいのですが、個人的
好みで写真はシャトー・ド・ピゼイに致しました。ジュルジュ・デュブッフは
さすがに大手の造り手だけあって品質の高いヌーボです。タイユバンも
見事にボージョレ・ヌーボの特徴をつかんだフレッシュでシャープな
味わいでした。ショトー・ド・ピゼイは他のヌーボと比べるとちょっとしっかりと
したタイプのヌーボです。どれも素晴らしい出来ですので好みに合わせて
お楽しみ下さい。
 
 

ヴィーノ・ノヴェッロ

さてフランスがボージョレ・ヌーボならイタリアはヴィーノ・ノヴェッロです。
同じマセラシオン・カルボニック法で作られるこちらもフレッシュでまろやかな
新酒です。イタリアにはボージョレ・ヌーボのような解禁日がないため
いまひとつ盛り上がりに欠けますが美味しさでは負けていません

ボージョレ・ヌーボと違うのは原料葡萄がイタリアの主力葡萄品種
「サンジョベーゼ」である点です。ですから同じヌーボでもイタリアらしい
新酒に仕上がります。普段からイタリアワインに慣れている方はこちらの
方がお気入りになること請け合いです。

写真のノヴェッロはGABBIANELLOという名前の1999年の新酒です。
デパートなどではボージョレ・ヌーボと並べて試飲サービスを行っているところも
多いようです。(東急百貨店様、ご協力ありがとうございました)

そうそう、セブン・イレブンでも今年はノヴェッロを販売しているそうです。
イタリアの新酒もだんだん市民権を得てきた様です。

さて値段も手頃で今世紀最後のヌーボー、あなたはボージョレ・ヌーボ、
ヴィーノ・ノヴェッロ、どちらを楽しむのでしょうか?
勿論両方飲んだってかまいませんよ。


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