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ラインガウはドイツでも最も偉大なワインが産み出される産地と言っても過言ではないと私は思います。
ラインガウなどライン河沿いのドイツワインは茶色のボトルに入っていますので、ワイン売り場で探す時には、先ず茶色の瓶を目印にしましょう。
スイスに源を持つライン川が北上を続けた後、大都市マインツを過ぎた当たりから大きく向きを変え、西に向って流れる50Km程の部分の北側に位置するのがラインガウ地域です。
更に北側はタウヌス山系の山々が東西に続き銘醸地ラインガウはこの山々の南斜面に広がっています。
ライン川は川幅が大きく広がり最も広いところは1.2Kmにも及びます。この豊かな水によって急激な温度変化が和らげられ、しかも太陽光が反射するという恩恵にあずかった葡萄畑は、それ自身が南向き斜面という最高の条件を備えています。
この地域で栽培されている葡萄の80%以上がドイツ最高品種と言われるリースリングです。遅摘みのこの葡萄は収穫が遅い分、天候の影響も受けやすく栽培が難しい品種ですが、天候に恵まれると素晴らしいワインを産み出します。
ラインガウというだけで上質なワインを連想してしまいますが(少々乱暴です)、更にこの地域には特筆に価する素晴らしい畑がたくさんあります。少し紹介しましょう。
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ラインガウはさすがにドイツ最高のワイン産地だけあって、ここにちなんだ話には事欠きません。でも、これだけは外すことのできない話というのがあります。それは2つの修道院とドイツワインとの関係です。12世紀ころラインガウには12の修道院が建設されはじめましたが、このうちの2つ、エーバーバッハ修道院とヨハニスベルグ修道院はドイツワインを語る場合に忘れてはならないところです。
シトー派というキリスト教の一つの流れがあります。この宗派はフランスのクロ・ド・ウージョの畑を作り上げた事で有名ですがここドイツでもワインに大きな貢献をします。エーバーバッハ修道院は1135年に創立されますが、200以上の葡萄畑を所有し当時ヨーロッパ最大のワインビジネスを展開するまでになります。ここで「カビネット」という言葉が生まれました。特に品質の良いワインを貯蔵するセラーの意味だったそうです。
クロ・ド・ウージョと同様に周囲を壁で囲んだシュタインベルグの畑はシトー派によって開拓されましたが、盗難防止用だったこの壁による温度保持の効果もあって素晴らしいワインが生み出されます。かのビスマルクがシュタインベルグワインを愛飲した話はとても有名です。
1100年頃にベネディクト派によって建設されたこの修道院では1775年にシュペトレーゼが発見されます。葡萄の収穫を遅らせて糖度を高める方法はその後のドイツワインに大きな影響を与えます。この修道院は現在ヨハニスベルグ城の一部となっていますが、シュロス・ヨハニスベルグは現在も素晴らしいワインを造り続けています。またここは北緯50度の緯度線が通っていることでも有名です。日本当たりで言うとなんと樺太の真ん中当たりに相当します。これは偏西風やメキシコ湾海流などの影響もあるのですがこんな北の地で葡萄が栽培され素晴らしいワインを産み出していることは驚異的です。
ここは修道院ではなく貴族の経営によるワイン畑ですが、やはり触れておかねばなりません。ラインガウでも初期の頃からの畑ですが、エレガントで酸味の豊かなこのワインもドイツ最高峰のワインの一つです。